株式会社松長鐵工

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 日本の滝百選に選定された名瀑「行縢の滝」を抱く行縢山。豊かな自然が広がるその麓に建つスタイリッシュな外観の工場が、今回の取材先「株式会社松長鐵工」です。「どんな注文でもなるべく断らないようにしています」と笑いながら語る代表取締役の松長今朝男氏の言葉の裏には、難しい依頼にも真摯に取り組むことで「松長品質」と謳われる信頼と技術力を培ってきた町工場としてのプライドを感じました。

 そこで今回は、株式会社松長鐵工代表取締役の松長今朝男氏と、次代を担う工場長の松葉正樹氏、経理・業務担当の松葉真由美氏に創業の経緯や今後の展望などを伺いました。


新工場操業


松長鐵工旋盤.png

この度は、新築移転おめでとうございます。まずは創業の経緯から教えてください。

社長 ありがとうございます。中学を卒業後、名古屋で就職し、19歳の時に延岡に戻って鉄工所に勤務しました。そして30歳となった昭和544月に独立。延岡市岡元町で中古の汎用旋盤一台からのスタートでした。


独立創業から43年を経て今回新工場設立となったわけですが、契機は。

社長 以前の工場は50坪ほどの広さで、機械の間を人が行きかうのも困難な程狭くストレスとなっており、3年程前から移転を考えていました。そんな中、昨年新型コロナウイルスが発生し、リーマンショックを上回る厳しい状況になり、創業以来、稀にみる不況となりました。しかし、逆に「ここまで落ちれば、後は上がるだけ」と踏ん切りがつき、新工場建設計画の通り、自分達で移転先を探した自然豊かな行縢町に新工場を建設し、先月移転して参りました。


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新工場の面積やこだわった点は。

社長 敷地面積は約500坪で、工場内も広々としています。また、周囲は緑に囲まれた静かな環境ですので、ご近所の皆様にご迷惑をお掛けしないよう、防音には特に留意した設計になっています。

松葉 こだわった点は、一般的に鉄工所というとどうしてもきつい・危険・汚いといったいわゆる3Kイメージを抱かれがちですが、これからのものづくり現場には男性や女性、国籍さえも関係なく、間口を広くしていろんな方に興味を持っていただけるよう、事務所や休憩室は鉄工所ぽくない、スタイリッシュな造りになっています。検査室は、品質管理2人の好みで壁紙を選び、長い時間過ごすお気に入りの空間に仕上げました。また、SDGsの一環で、新工場にはクリーンエネルギーの活用を課題とし、自家消費用の太陽光発電を設置しました。東日本大震災後は特に、脱炭素化の取組みが社会貢献へも繋がることを痛感しており、災害時は非常用電源を使って地域の方々にもお役に立てればと思っています。



事業内容


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御社ではどんな物を作っているのですか。

社長 弊社は「素材から連携したものづくり」をモットーに、顧客から送られた図面をもとに、鉄やステンレス、アルミ、銅、チタン、ハステロイ等の素材を加工して、あらゆる分野の機械部品を製造しています。元来は「旋盤屋」として、旋盤加工のみ対応していましたが、お客様の要望に合わせて徐々に機械設備を増強し、現在は受注した製品製作の旋盤加工からフライス/マシニング加工、溶接加工、品質管理(製品検査)まで、多品種少量生産のため、リピート製品以外は1回の受注で110個という単品注文が多く、その都度新しい工程を構築しなければならないという手間はかかりますが、その分加工現場社員の応用力が高く、ひとりひとりの能力の高さには自負するものがあります。また、新事業のアーク溶射加工では、メンテナンス部門需要に応え、得意とする旋盤加工技術を活かし提供しております。

工場長 新しい図面や異なる材質でのご依頼が来る度に頭を抱えることも多いですが()、なるべく断らずに受け入れてきたお陰で、非常に硬くて加工が難しいと言われる難削材にも対応できるようになりました。お客様に「挑戦する」機会を頂いて、その経験値の積み重ねが弊社の強みになっているという面もあり、とても有難く感じています。


今年は新しい取り組みも始められたとか。

松葉 顧客数は100社以上、ここ数年のアイテム数は8000点を超えますが、毎月コンスタントに受注があるわけではないので、商談会等に積極的に参加して営業活動を行ってきました。しかし、ここ2年間はコロナ禍によりほとんど営業に出られなかった為、PRツールの一つとして、新しいホームページやSNSを活用しています。お陰様で、ホームページを見てお取引いただいたお客様もいらっしゃり、品質管理の女性2人が担当しているゆるい感じのスタッフブロクも好評だったり()。今後さらに活用していきたいと考えています。

 また、以前からずっと「自社製品があるといいな」とは思っていたのですが、コロナ禍を機に、鉄や木材を使用したインテリア雑貨を販売する「Iron&Wood 's Maker(エムズメーカー)」というオリジナルブランドを昨年末に立ち上げました。その第一弾が、抗菌効果のある銅(Cu)を四葉のクローバーの形に加工した非接触型アシストツール「CULOVER(クローバー)」です。「ウイルスが怖くてドアノブやエレベーターボタン、タッチ画面に触りたくない」という方の為に、CULOVERを手指の代わりに使用することで、物との接触を控えることが出来ます。他にも、星型シェルフや星型ブックスタンドなどのインテリア雑貨も併せてホームページで販売しており、少しずつご注文も頂くようになりました。さらに、東急ハンズ新宿店で今年9月に開催される(予定)町工場の自社製品を販売するポップアップストア出展にお声掛けをいただき、現在は新商品を構想中です。男性のイメージが強い鉄工所ですが、エムズメーカーの商品を通して女性はもちろん、若い方にも鉄工所をもっと身近に感じていただけたら嬉しいですね。異業種の方とのコラボでオリジナル製品づくりも挑戦したいです。



人材育成


現場で指導していることは。

社長 まず怪我をしないこと、安全に業務を行うことが何よりも大事です。素材を回転させ削る旋盤や刃物を回転させ削るマシニングセンタ、6000度という高温の中で作業するアーク溶射等、危険な作業が多々ありますので、危機管理や技術面の指導はしっかりと行っています。また、弊社の製品は「松長品質」としてお客様から信頼を頂いておりますが、社員には「製品を出荷するまでの社内での失敗は失敗ではない」と伝えており、何度もトライアンドエラーを繰り返し、各個人の技術力を磨いています。


新人教育にも注力しているそうですね。

工場長 社員数は11人ですが、昨年、異業種から転職し入社した30歳の新人や汎用旋盤女子など、みんなものづくりが好きで入社したメンバーばかりです。習うより慣れよで、初めから現場に入ってスタートするので、試作なしの一発勝負だったり、納期が短かったりと、経験が浅いほど乗り越えなければならない壁に何度もぶち当たりますが「失敗して当たり前」ですからね。その都度壁を乗り越えてきた社員達の成長はとても早く頼もしく思います。


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技術力の高さが御社の強みですね。

社長 延岡市は工業の町でもあり、市内には同業他社がたくさんあります。ですが、多くの町工場は旋盤だけ、溶接だけと分業制でそれぞれの得意技術を高めている場合が多く、特にアーク溶射加工は特殊な技術で、県内でも弊社を含めて4社しか導入していません。弊社と同規模の小さな工場で、これほどそれぞれの機械を連携しながら一貫して製品づくりに取り組んでいる工場はあまりありません。小規模であることを逆手にとって、機動力の高さや、要望に柔軟に対応できる点は弊社の強みだと思います。



今後の展望


最後に今後の展望を。 

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社長 特急品対応以外は、現在は後進の指導に注力しています。弊社の始まりは1台の汎用旋盤からでしたが、プログラミングし自動制御で動くNC機械と違い、手作業で製品を造り上げる汎用旋盤は操作が難しく、今延岡市内でも汎用旋盤職人といえる人は、おそらく50代が最後の世代で、なかなかやりたがる人がいないのが現状です。今後生き残りを考えた時、敢えて汎用旋盤の技術取得に努める人材、どんな機械でも扱える多能工な技術者の育成が必要ですので、これからも現場指導に尽力して、技術を継承していきたいと思います。

 最後に、新工場建設にあたりたくさんの方々にお力添えいただき、感謝申し上げます。

工場長 私は入社して26年経ちますが、未だ勉強の毎日です。それ程ものづくりは難しいですが、一方で何の形もないゼロから製品を生み出すというのは、非常に面白くてやりがいと達成感のある仕事です。世界のどこかで活躍する当社で造った部品達を思いながら、これからも社員と共に切磋琢磨し、誇りを持ってより精度の高い製品づくりに取り組んでいきたいと思います。

 私のこれからの役割は「継続」、松長が築いたものを引継ぎ、後世へ継続させてまいります。お見積もりや製作ご依頼がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

松葉 これからも分野や材質は問わず、必要と言われる物があれば、弊社の強みを活かし、どんな物にでも挑戦し対応していきたいと思います。その為には、他社と差別化を図り、複雑形状の難加工製品にも対応できる最新工作機械導入と今後を担っていく人材が必要になると思いますので、若手社員の採用を積極的に行っていきたいと考えています。この厳しい現状で町工場が減少する中、弊社で技術を習得した若手が将来夢を持って独立創業し、松長のような町工場社長が増えていく...という流れが出来たら素敵ですよね。今後更に技術力を高め「松長鐵工で働きたい」と思ってもらえるような魅力ある町工場を目指していきたいと思っています。


ご協賛の企業様

有限会社 量栄建設 様

株式会社 松谷工業 様

株式会社 興電舎 様

米良電機産業株式会社 様

江藤酸素株式会社 延岡営業所 様

株式会社 CMねっと 様

株式会社 日本精機紹介 様

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