あなたの身近にあるうつ病

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 「最近なぜか調子が優れない。なかなか眠れない。食欲が低下してきた。」それは、うつ病のサインかもしれません。
 現代社会を生きる私たちは常に多くのストレスにされされながら日々を過ごしています。そんなストレス過多な状況に、ある日突然心が、体が、疲れてしまったら...?
 決して他人事ではない、身近に潜む「うつ病」について、宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野の石田康教授に話を伺ってきました。

【うつ病とは】

―うつ病の分類は。

石田 うつ病と診断される患者さんは大きく4つに分類されます。一つ目は「単極性うつ病」で、一般的に皆さんが想像するうつ病はこのタイプになります。病前性格は真面目で几帳面と言われ、心理的負担・身体的な要因などにより発症します。二つ目が「双極性うつ病」で、これは病的な高揚感が続く躁状態(例えば気が大きくなったり、ひたすらしゃべり続ける、落ち着きがなくなるなど)と、うつ状態を繰り返すものです。三つ目が「気分変調性」で、これは軽症あるいは中等症のうつ病の症状が長期間(少なくとも2年以上)続くもので、かつて「神経症」と呼ばれていた患者さんも含まれます。四つ目が「非定型うつ病」です。これは一般的なうつ病の場合、例えば仕事の失敗等があると「自分の失敗のせいで...」と攻撃の矛先が自己に向かいますが、非定型うつ病の場合は「上司や会社のせいだ」と、攻撃の矛先が他者に向かいがちです。このタイプは比較的若い世代の患者が多く、テレビや雑誌等では「新型うつ病」と称される場合もあります。ただし、「新型うつ病」という医学用語はありません。

 ここに挙げた以外にも例えば季節性うつ病や老年期うつ病などうつ病の種類は数多く存在します。一般的なうつ病の症状を挙げると、

■身体状態...不眠、食欲減退、だるさ、頭が重い、便秘、性欲低下など

■精神状態...憂うつな気分、楽しいと感じられずに興味がわかなくなる、判断力や決断力が鈍る、集中できない、不安・焦燥感などがあります。

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―うつ病になりやすいのは。

石田 日本におけるうつ病の生涯有病率(一生のうちに少なくとも一回はうつ病にかかる割合)はおよそ15人に1人と言われており、男性に比べて女性の方が倍ほど高くなります。女性の場合は、周産期(妊娠時期や出産後)、あるいは更年期の際に、主に脳内のホルモン環境の変化が影響して罹患するリスクが高くなります。その他、男女ともに仕事量の増加や家庭内トラブルによる心労、職場の配置換えや引越しなどの環境の変化、肉親の死去などの喪失体験といった心理的な負担、認知症や脳卒中、心筋梗塞などすでに別の病気に罹患しているといった身体的な要因、インターフェロンや副腎皮質ホルモンなど薬剤の副作用による罹患もあります。また、うつ病は遺伝によって発症する要因もあり、例えば一卵性双生児の場合、双子の片方が双極性障害を患っている場合、もう片方が罹患する確率は4070%と言われています。また単極性うつ病の場合は、一卵性双生児で1525%、第一度親族(親、子、兄弟)で1020%程です。

 

【治療方法】

―うつ病の治療方法は。 

石田 典型的なうつ病の場合、治療のポイントは"休養"と"薬の服用"です。一般的に抗うつ薬などの薬を服用するというと、「麻薬のようなものではないのか?」「強い薬」「癖になりそうだ」「治ったらすぐやめるべきだ」といった偏見や誤解が持たれがちです。しかし多くの場合、うつ病は脳の機能低下によって発症する病気ですので、抗うつ薬は特に単極性うつ病の場合比較的有効で(有効率7割弱)再発予防効果もあります。さらに最近では比較的副作用の少ない薬剤も登場し、より安全に使用できるようになりました。その一方で、即効性についてはやや劣り、うつ病の種類によっては効きにくい場合もありますので、専門医の適切な診断が必要となります。他にも、人によっては病気の治療のために服用している薬剤の副作用で、あるいは鎮痛薬依存の結果、うつ病を発症する場合もあり、現在服用している薬剤の見直しも必要です。

 また、患者さんの考え方の歪みを修正する認知療法や、悩みを受け止めたうえで適切な助言を行う支持療法などの精神療法も治療法のひとつです。特に支持療法は、患者さんの話を聞き、胸の内に蓄積されている苦悶感を吐き出させることが一つのポイントとなります。多くの場合、うつ病は治療可能な病気であり、社会復帰も出来ますので、まずは病気であるということを理解し、十分な休養を取りながら担当医と一緒に治療を行って下さい。

 

【うつ病予防】

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―うつ病にならないためには。

石田 大切なのはストレスを上手く管理・対処することです。例えストレスの多い生活を送っていても、ストレスと上手く付き合うことが出来れば罹患しにくくなります。うつ病は、早期の対象喪失(小さい頃に身内を亡くしたなど)の発達的要因、前述した遺伝的要因、そしてストレスに対する脆さ(脆弱性)等が絡み合い、脳内神経情報伝達機能に障害が生じて発症します。一つの鍵となるのがこのストレス脆弱性で、重篤なストレスが発生した場合にどう向き合うかがポイントです。「私はストレスに弱い。しかしストレスをうまく処理することはできるかもしれない。」という意識を持つことで、うつ病の危機を回避できることもあります。またストレス管理・対処法のコツとして、楽しめる趣味を持ったり、食事をバランスよく採る、減点法で自分を採点するのではなく加算法で評価する、ストレスを書きだしてコントロール出来るもの・出来ないものに分類し、出来ないものについては放置する、相談相手を持つ、ユーモアの精神を大切にすることなどが挙げられます。

 

【周囲のサポート】

―うつ病の方が身近にいる際、周囲が気を付けることはありますか。

石田 まず注意してほしいのが、やみくもに叱咤激励をしないことです。安易な励ましや説教、根性論の押しつけ等は逆効果となることがあります。また、うつ病を発症したからといって態度を急変させるのも相手を不安にさせてしまいますので、今まで通り自然に接するようにしましょう。回復を焦るばかりに、患者さんにとって馴染みのない運動や旅行などの気分転換を勧めるのもよくありません。家事など日常の負担を軽減させてあげ、決断を迫らず、重要な決定等は先延ばしさせて下さい。うつ病の治療にはご家族の温かいバックアップが大切です。慌てず騒がず、適度な距離を保ちながら、気長に優しく見守りながら、患者さんの話によく聞いてあげて下さい。

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