宮崎杉の有効性

| コメント(0) | トラックバック(0)
宮崎杉.jpg

県土の76%を森林が占める緑豊かな宮崎県。かつて船の弁甲材として国内外で高値で取引されていた「飫肥杉」をはじめ、宮崎県は杉の生産量日本一を誇る林業県である。

 今日は、そんな林業県宮崎が誇る県産材杉の特性や有効性などを伺いに、宮崎大学農学部森林緑地環境科学科准教授 雉子谷佳男先生の元を訪ねた。

杉センター001.jpg

■宮崎県産杉の特性

―宮崎の杉にはどの様な特性がありますか。

雉子谷 宮崎杉の代表選手と言われる飫肥杉は、江戸~昭和時代にかけて船の弁甲材として使用され、国内外において高値で取引される最高級品でした。この飫肥杉は15の品種に分かれており、県内で最も多く植えられているのが、心材部分が綺麗な赤色をしたオビアカ、トサアカ、タノアカといった "アカ系統"です。中でもタノアカは九州内の他の杉と比較しても強度的に非常に優れており、心材部分にはシロアリや腐朽菌に強い抽出成分とよばれる化学成分を蓄えています。例えばシャーレにシロアリを100匹入れ、同じサイズの杉と松の心材を入れて比較した場合、松は3040日でシロアリに食べられてしまいますが、杉は反対にシロアリの方が10日で死んでしまうという実験結果もあります。現在は宮崎県木材利用技術センターと協力して、杉本来が持っているこの耐久性を活かして檜の代替品として杉を家屋の土台材に使用できないかどうか等の試験を行っています。

 

■外材との相違点

―国産材と外材の違いは。

雉子谷 日本と海外ではそもそも木材に対する考え方が違います。海外では強度に重点を置き、強度の優れた樹種を選び、さらに品種改良しながらより強い木材を生産しています。そのため外材に強度で対抗するのは難しいと言わざるを得ません。その反面、外材は保存処理薬剤を注入することで耐久性を保っていましたが、近年環境問題の観点から成分の強い薬品が使えなくなっています。一方の国産材はというと、これまで品種による強度の差は考慮せず、木材の見た目や成長速度に重点を置いて木材を生産してきたため、同じ杉でも品種によって強度に倍ほどの差があることもままありました。ですが耐久性という面においては国産材の方が優れており、国産材で建立された法隆寺がこれだけ長い年月その姿を残していられるのも、強度よりも耐久性が高いことに他なりません。

 

■県産材を使う意義

―県産材を使用するメリットは。

①集約的な林業の実現

杉丸太004.jpg

雉子谷 現在日本の木材自給率は28%で、残りの72%は全て外材で賄われています。林野庁は今後10年間でこの自給率を50%に引き上げるという「森林・林業再生プラン」を2009年より掲げており、これが実現すれば、国内の林業関係者の収入増や、若者の雇用機会の拡大、産業の新興や、地球温暖化への貢献など、様々な利点が見込まれます。その一環として、昨年の10月に「公共建築物等木材利用促進法」が施行されました。これは公共の建築物に率先して木材を利用するというものですが、これを実行するには杉や檜などの国産材を大量に有する林業県でなければ難しいと言えます。その点、宮崎県は平成3年から杉素材生産高日本一を続けており、木材の埋蔵量も豊富なうえ、他県に比べて林道整備が進んでいるので、このサイクルが動き出せばコストを下げながらの集約的な林業が可能になるかもしれません。

②二酸化炭素の固定 

雉子谷 次に二酸化炭素の固定というメリットがあります。固定とは光合成の事ですが、固定された二酸化炭素は細胞壁や植物体を構成する材料、あるいはエネルギーへと利用され、固定された炭素の約半分が木材として蓄積されます。この二酸化炭素の固定に特に有効なのが杉や檜の人工林です。伐採した杉や檜の木材を利用して家を建てると、その家が燃えたりしない限り、永久的に二酸化炭素を固定していることになります。さらに伐採した場所に植林をするとことで、若い木々が活発に光合成を行い、新しい二酸化炭素の固定へと繋がります。つまり、県産材を伐採し住宅等に利用することで倍の二酸化炭素が固定でき、地球温暖化にも貢献できます。このサイクルを回すためにも県産材の利用はとても意義のあるものだと思います。

 

杉家002.jpg

■今後の展開

―最後に今後の展望を。

雉子谷 国産材を使用することによって生じる様々なメリットや、国のバックアップ体制も整い、残る問題は木材の性能です。木は生物ですので、遺伝子と生育環境により木材の強度や耐久性などにばらつきが生じることもあります。ですが国産材は外材に比べ、耐久性などの性能を遺伝的に持ち合わせていますので、こうした国産材本来の才能を最大限に引き出せるよう、今後はより優秀な性能をもつ品種や家系を選抜し、品種改良を行い、より性能の高い木材を生産できる高度に管理された林業の実現に向けて、魅力のある国産材作りを推進していくことが大切だと思います。

―お忙しい中ありがとうございました。(聞き手・酒井里佳)

Categories

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 宮崎杉の有効性

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.blog-journal.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/241

コメントする

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30