宮崎大学医学部付属病院 奥村学 薬学博士

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奥村 学_薬学博士.jpg10月は「乳がん月間」です。今回は、がん撲滅運動の一環として、30歳から64歳までの働き盛りの女性では死因のトップになっている乳がんについて、その特徴と最新の治療法を、主に化学療法を中心にして、宮崎大学医学部付属病院の奥村学薬学博士にお聞きしました。

乳がんの特徴

乳がんは、乳房の組織に発生するがんであり、男性にも発生しますが、ほとんどが女性に特徴的ながん腫の一つです。近年、マンモグラフィーなどの検診技術の進歩と普及により、年間4万人以上の新たな患者さんがみつかっています。しかし、乳がんは早期発見率の向上とともに、新しいタイプの薬物の登場などによっても根治率および生存率が著しく向上してきており、適切な診断と治療によって高い治癒率を期待できるがん腫です。

特に発現頻度の高い年齢は、4050歳代閉経後>60歳代>30歳代であり、該当する女性の方は、日ごろから自己診断(乳房の形の変化やしこり、乳頭のへこみや分泌物などのチェック)を心がけ、定期的に乳がん検診を受けることが大切です。

 

乳がんの種類

乳がんは大きく分けて、非浸潤がん(9%)および浸潤がん(89%)があります。乳房は、お乳を作る小葉と小葉から伸び乳頭にお乳を運ぶ乳管から構成されています。この小葉と乳管内の細胞ががん化し、がん細胞がその小葉と乳管内に止まっているものを非浸潤がんと言い、小葉と乳管外の周囲脂肪組織に広がっているものを浸潤がんと言います。

  

 「分子標的治療剤」がん治療に期待の新しい抗がん剤

 

乳がんの治療

標準的治療法としては、外科療法、放射線療法、内分泌療法(ホルモン療法)および化学療法(抗がん剤)があります。今回は、そのなかでも、内分泌療法と化学療法についてご説明します。

抗ホルモン剤乳がんの中には、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンによって成長が促進されるタイプがあります。これらのホルモンの働きを遮断し、がん細胞の増殖を抑制する薬物が抗ホルモン剤です。女性ホルモンによって成長が促進されるタイプの乳がんは全体の6070%で、そのうちの4050%がこの抗ホルモン剤が奏効します。

アロマターゼ阻害剤女性ホルモンは閉経とともに減少しますが、閉経後も副腎から分泌されるアンドロゲンから作られ、この時アロマターゼと言う酵素が働きます。このアロマターゼの働きを抑えてアンドロゲンから女性ホルモンが作られるのを抑制する薬物です。

抗がん剤(化学療法剤)乳がんの治療に広く使われる薬物にはアンスラサイクリン系と言われる薬物があります。この薬物は、抗腫瘍効果を有する抗生物質であり、DNARNAの合成を阻害することによって細胞の増殖を抑える作用を持っています。現在、このアンスラサイクリン系薬物であるエピルビシンにシクロホスファミドと5-FUと言う抗がん剤を併用するFEC療法を中心とし、アンスラサイクリン系薬物の種類を変えたFAC療法や、FEC療法やFAC療法と他の作用点に効く薬物(ドセタキセル、パクリタキセル)との併用療法が用いられます。

分子標的治療剤がん細胞に特有の遺伝子や、その遺伝子から作られる蛋白質などの産物を標的に作用する薬物を分子標的治療剤と言います。近年急速に開発が進んでおり、多くのがん腫に対して大変期待されている薬物です。乳がんでは、がん細胞を増殖させる因子ががん細胞に結合する場所(HER2蛋白質)を標的とする抗体であり、乳がん細胞に過剰発現しているHER2に結合することにより増殖を抑え、同時に免疫細胞によってがん細胞を破壊させる作用を有するトラスツズマブと言う薬物があります。このトラスツズマブは、術後化学療法や転移性乳がんに対して高い効果を示します。

 

がん化学療法をお受けになる患者さんへ

がん患者さんやそのご家族にとりまして、がん化学療法を自ら調べることは大変困難であるにもかかわらず、最良のがん化学療法を受けたいと願われることと思います。そのような時には、信頼のおける専門の医師にお尋ねになるのは当然ですが、セカンドオピニオンの一人として、がん薬物療法に詳しい薬剤師にもご相談いただきたいと思います。今回、限られた紙面のため、説明できなかった他の有効な薬物や治療成績および副作用についてお教えすることも可能です。

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