日本武道 剣道防具アドバイザー 多田竜三さん

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多田竜三.jpg2003年のアメリカ映画「ラストサムライ」のヒットでも再び注目を集めた武士道精神。

その武士道精神を根底にした競技、礼に始まり礼に終わるという剣道の普及と共に、防具アドバイザーとしてパリに拠点を置き活躍している青年がいる。

純国産の剣道防具である八光印剣道防具を手がける宮崎県西都市の㈱多田産業の創始者を祖父に持つ多田竜三さんがその人である。

昨年8月から、パリを中心に活躍・普及に熱心に取組んでいる「日本武道」剣道防具アドバイザーの多田竜三さんに、一時帰国を機にヨーロッパの剣道事情などを含めてお話を伺った。

―パリに拠点を移して、半年経過して如何ですか。

 

最初の3ヶ月は、フランス語という言葉の問題もあって、外に出るのもびくびくといった感じもありましたが、今ではずいぶん自信もついてきました。

 

―剣道一筋で5段の腕前だそうですが、あらためて、多田さんと剣道の関わりを教えてください。

 

私は男ばかり3人兄弟の末っ子ですが、家が商売をしており両親が忙しかったこともあり、幼い頃はさびしい思いもしました。そんな折、次兄が剣道をしていた影響で、私も5歳から剣道場に通うようになりました。

宮崎県警察学校にある武徳殿朱雀館道場で、中学まで、熱心に練習に通いました。

朱雀館に通えるのは中学までなので、その後、日向学院高校では剣道部に入部し、

芝浦工業大学に進学後も剣道を続け、卒業後、昨年6月までは、朱雀館道場で指導者の1人として子供たちの剣道指導に携わっていました。

剣道の鍛錬の中では、もちろん辛いことも少なくはありませんでしたが、支えてくれる仲間がいたから続けられたと思います。

 

子供の躾のために剣道を始めさせるという親御さんもおられますが、確かに自分の経験からも、礼儀や目上を敬うといったことは身に付きますし、体力の向上と共に、防具を着けて行いますので、ルールを守れば安全な競技であるのも剣道の魅力だと思います。

 

イル・ド・フランス大会.jpg―そんな中、生活の拠点をパリに移すことになったのは?

 

私の小学生時代の将来の夢は、工場長でした。と言うのも、多田産業の創始者が祖父ですので、幼い頃から防具を製作したり修理しているのを見て育ちました。

自分も剣道をしながら、見よう見まねで防具の簡単な修理もできるようになり、防具を作る工場で一番偉い人になる・・・それが工場長だったんですね。

ですから、卒業後の道も見えてはいたのですが、大学を卒業するときに、外国の文化や生活に触れてみるのも、将来何か役に立つと思い、海外旅行をすることになりました。私自身は英語なら多少できることから、アメリカに行きたかったのですが、

「どうせ行くなら、剣道を中心に考えた方がいい。日本文化に関心を持っている国にしなさい」という父の勧めでヨーロッパを選びました。

ちょうど国士舘大学の先生が渡欧されるということで、同行させて頂く形で、剣道を通してコミュニケーションを図りながら滞在することになりました。

剣道をすると共に、防具の修理もしながら、ハンガリー、フランスと回りましたが、その中でも特に、パリにおいて、八光印剣道防具への興味、そして剣道への関心が高いことを肌で感じ、再度行きたいと思い続けていました。

 

卒業後、再度渡仏し、貧乏旅行ですから剣道場に寝泊りしながら道場を回りました。

道場をめぐる中で、現地の友人も確実に増えていきました。また折角の機会ですから、八光印剣道防具のカタログも配りながら旅を続けたのですが、そんな中で、パリの剣道専門店である「日本武道」から、パリで展開(取引)してみないかというお誘いを頂いたんです。八光印の、宮崎産の剣道防具を輸出、PRできるチャンスだと考えました。とはいっても、文字通りゼロからのスタートですから、帰国後、まず運送関係を勉強し、輸出ルートを確保することから手がけました。これが9年前のことです。

それから、宮崎とパリを機会あるごとに行き来する中で、更に力を注ぎたいと感じるようになり、昨年8月にパリに移りました。

 

―ヨーロッパの剣道人口はどのくらいですか。

 

フランスを例に挙げると、9年前は約3000人でしたが、今年初めには約8000人に増え、ヨーロッパ全域では2万人を超えています。日本の剣道人口が約100万人といわれる中、これは結構大きな数字だといえます。

9年前に防具を輸出するようになった頃から、パリで見ると剣道人口が2.5倍強になったわけですが、この一役を担えたとすれば大きな喜びですね。

 

ヨーロッパの人たちにとっての、日本の剣道は、東洋の神秘といった感じがあります。日本文化を理解するのは、なかなか難しいことですが、だからこそ剣道の奥底にある伝統や作法、また根性といったものに、非常に関心を持っておられます。

ある意味、日本人の中で薄らぎつつあるものや精神に興味を持っている人たちが多いんです。彼らに接する中で、私自身、剣道とは単に技術を磨くというだけでなく、躾や教育、あるいは一戦交える中での社交性といった様々な要素が加わって構築されているんだということに気づくようになりました。

 

日本では、私がそうだったように、幼い頃から剣道を始めて、まず技術を身に付けてから色々な知識が備わってきます。対して、ヨーロッパ(海外)では、大人になって剣道を始める人が殆どです。

先ず、武士道といった精神面に興味を持ち、様々な方法で知識を身につける。その上で、それを体感して追究したいということで剣道場に通う。

つまり知識レベルとしては、非常に高いところからのスタートとなるわけです。

社会的地位の高い方たちも、道場には通ってこられます。

ヨーロッパには騎士道精神というものがありますが、それと武士道精神の違い、あるいは共通するところなど、比較して学びたいという思いもあるのかも知れません。

そうした取組み方は、日本人からすると、また刺激にも勉強にもなりますし、剣道を指導する立場の私も、更に勉強、鍛錬しなければという思いを、日々新たにしています。

 

―ヨーロッパでも大会は定期的、あるいは数多く開催されるのですか。

 

ヨーロッパは陸続きで、車や列車で23時間も走れば隣の国といった環境ですから、国をはさんだ大会・剣道講習会は、月に1,2回開催されます。規模も、小さなものから300人参加といった大きなものまで色々です。

 

今年3月には、3年に一回行われ、今回は日仏友好150周年の記念行事の一環にもなっているパリ大会が開催されます。剣道を主体とした大会ですが、和太鼓や、居合道、杖道など諸武道が披露されることになっています。

日本では考えられないことですが、これまでにも剣道対薙刀(ナギナタ)や、剣道対槍(ヤリ)といった対戦も行われたんです。武道の壁を作らず対戦する・・・これは海外ならではの面白いところかもしれませんね。

 

―そんな環境の中で活動を続け、どんな変化がありましたか。

 

私が剣道防具アドバイザーを務めている「日本武道」では、これまでオーナー一人で活動していたので、大会のときも審判を務めるだけで手いっぱいでしたが、現在では、イタリア、イギリス、スイスなどヨーロッパ内での大会の度に出店、営業して、防具の修理などクレーム対応もその都度できるようになりました。

実際、防具の修理を必要としておられる方はとても多いんですね。日本国内のように郵便物が短期間でスムーズに届かないお国柄というか、ヨーロッパでは流通に時間がかかるので、これまでは防具修理でも、いったん修理に出すと戻ってくるまでに相当時間がかかっていたと思われますし、コスト面でも負担が大きいですよね。これも独自の流通ルートを確保したことで、よりスムーズに行くようになりました。

また大会その場で対応できるのですから、時としては修理をする私の前に、長い行列ができ、1,2時間待ちということもあります。

但し、これもお国柄なんでしょうが、全てにおいてゆったりしたペースで物事が運ぶので、待つのも平気。待ち時間に客同士で会話が弾み、いざこちらが接客しようというときに、話が終わるまで逆に待たされることもあるくらいです。

郵便局やファストフード店に行ったときなども、一人一人に対する接客を丁寧にというスタイルなので、とても時間がかかる・・・でも、それが当たり前で、誰もが待ち時間を楽しんでいる感じです。私自身も、そんなライフスタイルに徐々に慣れてきました。

 

―これからの目標や夢は?

 

一番は、日本とヨーロッパの橋渡しをしたい、架け橋になりたいですね。

現在、海外から日本への剣道留学はあるのですが、日本から海外への剣道留学はほとんどありません。剣道は日本古来の武術ではありますが、私自身が感じているように、海外で育った剣道を、日本の子供たちが体験することも、日本文化を見直すといった面でも大きな意味があると思います。

ですから、日本と海外双方向への剣道留学といった子供たちの異文化交流にも力を注ぎたいと思います。

そして、何より八光印剣道防具と私の生まれた宮崎を拠点にした剣道の国際大会を開催したいと考えています。これは、ヨーロッパに限らず、台湾や韓国などアジアの国々をはじめ世界各国から、先ずは剣道関係者に宮崎に来てもらい、よさを知ってもらって、それが更に広がり、交流の場として、多くの人が宮崎を訪れてくれるようになると嬉しいですね。

 

パリに仕事と生活の拠点を移して、ようやく半年ですが、少しずつ結果も出てきました。

剣道はすぐに結果が表れるものではなく、努力の積み重ねが初めて結果に結びついてくるものです。剣道で培ったものをベースに、踏み出したからには波にのまれないよう、目標に向かって一歩一歩前進したいと思います。

 

***

「私を一番理解してくれて、足りないところをサポートしてくれる心強い存在」という

愛妻 恵理子さんと共に、パリでの剣道普及に情熱を注ぐ多田竜三さん。

インタビューのとき、隣で耳を傾ける恵理子さんの笑顔からも、夫唱婦随、力を合わせて夢を実現しようという思いが伝わってきた。

先ずは、3月のパリ大会の成功と共に、近い将来、宮崎での剣道国際交流大会開催を期待したい。

 

日本武道 パリ連絡先

3RUE EDOMONDO GONDINET 75013 PARIS

TEL : 33(0)1 43 37 65 65

FAX: 33(0)1 45 87 12 72

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