アイ・ホーム(株) 田村寛治社長


9月1日は防災の日だった。相次ぐ北陸や中越沖の大地震。いつ起こるか予測のつかない地震や台風などの災害。日向灘を震源地に抱える宮崎県にとっても他人事ではない。いざという時、私たちを守ってくれるはずの家。安心して長く住まえる家とは...。そんな家づくりに情熱を傾けるアイ・ホーム株式会社(宮崎市佐土原町)の田村寛治社長に話を伺った。


当時、注文住宅では宮崎県最大手であった建築会社勤務を経て、田村社長がアイ・ホームを設立したのは平成2年。

「勤務していた会社の、高級和風住宅に負けない設計デザイン、材質もランクをあげてと思ったものの、創業したばかりの名もない会社ですから、なかなか受注できず、やはり時間をかけて信用を確立する、ブランドイメージを確立する事が不可欠だと感じました。」

それから17年。全棟性能表示や長期20年継続60年保証など、地道に信用と実績を積み重ねて、昨年は受注が105棟。今年は更に上回る実績で、年商23億円にまで成長した。その殆どが木造住宅である。
アイ・ホームのモットーは『森の見える家づくり』田村社長の名刺には、「美しい街にしてゆきたい 故郷だから――。」と印刷されている。

「戸建ての家づくりは、木と土が密接に関わっています。だから敢えてUMK常設展示場では、森ではなく作品となるモデルハウスに『杜のことば』と命名しました。」

利便性からマンションという選択肢もあるが、田村社長があくまでこだわるのは、戸建ての良さである。

「秋きぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる という歌がありますよね。この時の風は、マンションの上層階に吹く風ではなく、庭の木々の間から家の中へ渡ってくる風なんですよ。そんな自然の移ろいを感じとれる、自然と共にあるのが戸建ての意義なんです。」

家づくりにとって重要なのは、建築資材となる木材である。身近な山から材を入れて...全国一の産地である宮崎県においては、もちろん杉材だ。

産地であるというだけでなく、地域の木を使うことは、輸送におけるCO2の排出削減につながり、温暖化防止にも大切な事である。
例えば、輸入材を使って建築する場合、海外から船便で輸送し、入港してから製材をし、更に宮崎へと輸送する。

木材1㎥当りを輸送する時のCO2排出量は、その8割を輸入材が占める国内消費木材の平均では152kg。一方、地域材(地元・国内)では10kgと、約15倍の違いがある。これだけを見ても、地産地消は家づくりにも大いに活かされる必要があるのだ。

地域木材を使って、家をより安心で安全、丈夫で長持ちさせるために、アイ・ホーム設立当初から田村社長が、資材メーカーと関東学院大学工学部の中島正夫教授との産学協同で力を注いできたのが、木材の寸法を安定させ、木を腐朽から守る方法の実用化だ。
現在、推奨されているのは120℃以上の高温乾燥である。短期間でカラカラに乾燥でき、見た目には割れもなく、きれいではあるが、木材内部は細胞が変形したり、成分が変化、内部の割れを生じたりする。また、木が本来持っている、自然界で生きて行くための防虫防腐成分が拡散して、シロアリに侵入されやすくなる。

スギを対象に、腐朽被害への影響を試験した結果、一定の条件下での木材の質量減少率が、高温乾燥材では約35%だったのに対し、自然乾燥材では約2.5%だった。また同様に行ったシロアリ被害の試験では、高温乾燥材では重量の減少量率が約63%に対し、自然乾燥材では約10%と大きな開きが出た。つまり、高温乾燥すると木材耐久性が低下することがわかったのである。

そこで考え出されたのが、DSシステムという木材の割れや変形を抑え、加えて腐朽防止効果のある工法である。新築時の精度を保つ寸法安定化で、効果は他に類を見ない特徴である。

これは、人やペットの健康を害するような影響のない、安全性が保証されたDS寸法安定剤を木材に注入した上で、表面の水分が残らない程度に60~70℃で中温乾燥する。

この中温乾燥は、自然乾燥に近いやさしい乾燥で、木材の含水率が40%〜35%程度で出荷する。これが、建築現場での自然乾燥を経て30%程度に下がるので、プラスター(しっくい、壁土)へのカビの影響もない。

高温乾燥に比べ、中温乾燥は時間がかかるとか、注入する薬剤のコストをリスクにする見方もあるが、実際には高温乾燥に比べ石油を使わない、つまりはコスト減。CO2排出量も大幅減で環境にやさしい。

木が本来持っている成分を中温乾燥で残すことにより、防腐・防蟻効果が高く、超長期間木材の耐久性が持続するので、建築後のメンテナンスが要らない。つまり、5年毎といった防腐・防蟻の定期的処理コストが不要と、メリットが大きいのである。

その裏づけが、通常シロアリ被害が出た場合、その白アリ自体の駆除費用しか保証されないが、DSシステム材を使った家の場合、駆除を含めて500万円まで保険会社が保証認定していることにある。木造住宅の人気が高まっている中、DSシステム材での建築が全国的に拡がれば、宮崎県産スギの消費拡大にも大いに貢献できる。

「ようやく、ここまできました。」と笑顔の田村社長。

しかし、家づくりはクレームやメンテナンス処理の仕事でもあり、建てれば建てるほどリスクも背負うことになるのだそうだ。それでもつくり続けるのは...

「私の父の代は、木材業でした。そして、ご先祖さまをたどってみると、島根の松江城をつくった棟梁だったらしいんです。だから、やっぱりDNAが導いたのかな。何より、家づくりが好きだからやれるんですね。」

そんな田村社長の目指す究極の家づくりは『記憶に残る家づくり』

「私たちがつくるのは『誰か』の思いや願いを形にした1軒です。その家を見て、どんな人がこの家に住んでいるのかな、住んでみたいな。ひいては、この人はどんな街のどんな家で成長してきたのかな。その人の生家を見てみたいな...そんな風に色々なことを感じたり想像してもらえる家づくり、こうしたプラスイメージとしての記憶に残る家をつくって行きたいですね。」

県産材を使い、自然や環境にやさしく、50年後も100年後も凛として立つ家。
美しい街にしてゆきたい 故郷だから――。

そんな街並みが見える気がした。

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